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砂糖を焦がせば薫る日々

サイト更新と読み物を少々

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以前投下した小ネタ(2)

『メールの時だけ無口っ娘』





「え?」
 洋一くんの言葉に、私は目を丸くした。
「だから、メール嫌いなのかなって」
 少し考えてから聞き返す。
「どうしてそう思うの?」
「いつも内容が短いから」
「……普通、だと思うけど」
「そうですか?」
 洋一くんは携帯を取り出して受信フォルダを開く。
 瞬間、私は顔が紅潮するのを感じた。
「『うん』『ううん』『違う』『いいよ』『待ってて』……さすがにそっけなさすぎると思いますよ」
「……」
 顔が曇るのが自分でもわかった。
「いや、責めてるわけじゃないです。ただ、舞子さんいつも明るいのに、メールだと極端にそっけなくなるから、何かわけがあるのかな、って」
「……別にない、よ」
「ならいいですけど」
 洋一くんは多少怪訝そうにしつつも、あっさり引き下がった。
「……」
 ちょっと不意打ちな質問だった。
 理由と言うか、まあ少し思うところがあるのは確かなので、やっぱり話すべきなのだろうか。
 本当になんでもないことなのだけど。
「……あの」
「ん?」
「えっとね、その」
 なかなか言い出せない。踏ん切りがつかないのはちょっと恥ずかしいから。
 彼は特に急き立てることもなく、黙って見つめてくる。
 見つめられると結構言い出しにくいけど、まあ、とにかく。
「……相手にメールが届くじゃない」
「…………ん?」
 言ってから当たり前だと思った。
 洋一くんの顔に「よく解らない」といった色が混じる。
「だ、だから、相手の履歴に残っちゃうじゃない!」
「……嫌なんですか?」
「いやっていうか……」
 私はその場に立ち止まり、思わずうつむいた。
「……………………恥ずかしい……」
 一瞬の静寂が訪れる。
 洋一くんは小さく吹き出した。
「わ、笑うな!」
「ご、ごめんなさい。で、でも」
「だって、恥ずかしくない!? 相手にずっと履歴が残ってて、たまに開いて読まれたりするんだよ? 迂濶なこと書けないじゃない!」
 答えてしまった反動か、言い訳にも熱が入る。
 言ってることは何も間違っていないつもりなのだけど、やっぱり変なのだろうか。
 洋一くんはどう思って、
「ごめんなさい。ちょっと意外だったものだから」
「意外?」
「いつも明るくていろんなことを話すのに、そこにこだわるのが意外」
「会話とメールは違うもん……」
 会話は残らない。でもメールは残る。
 私には二つは全く違うものに思える。
 ああいうことを話した、こういうことを話した、そんな記憶はあっても、みんなはっきりとは思い出せないものだ。
 もちろん深く心に残る言葉はあるけど、誰も機械のように記憶するわけじゃない。
 もし人間があらゆる会話を脳に刻めるなら、きっと私は何も言い出せなくなる。
 なんでもないことさえいつまでも残るというのは、あまりに怖いことじゃないのか。
 内心で密かに震えると、洋一くんが言った。
「でもぼく、舞子さんのことならほとんど全部覚えてますよ」
「え?」
 言っている意味がわからない。
「全部って」
「だから、全部。ぼく、記憶力はいいんです」
「例えば?」
「去年の六月、図書館での会話の内容とか。『身長いくつ?』『本棚高くない?』って」
 固まった。
「そんなこと言ったの? 私が?」
 この一年で一気に背が伸びた(本人曰く15センチ程)洋一くんは、それでも私と同じ160センチくらいしかない。
「言いました。ちゃんと覚えてますよ」
 慌てて謝る。
「ご、ごめん」
「なんで謝るんですか?」
「だって、失礼じゃない」
「気にしてません。それにそのあと舞子さんはこう言ったんです。『いつか私に本を取ってほしい』って」
「──」
 私はいよいよ恥ずかしくなって、一歩も歩き出せなくなってしまった。
 なんだ、そのわけわからん台詞は。
 それは確かに好きな相手が自分より小さいというのは、ちょっと気になる問題でもあるけど、だからといってありえない台詞だろう、それは。
 でもきっとそれは、その頃の私たちがまだ付き合ってなくて、私の方は洋一くんに完璧に惚れてしまっていて、それで不用意に発してしまった一言なのだと思う。覚えてないけど。
 恥ずかしい……。
「頑張って身長伸ばそうと思いましたよ。カルシウムたくさん摂ったおかげかようやく舞子さんに並べました」
 すぐに追い越しますからね、と洋一くんはにっこり笑った。
 それはなかなか頼もしくも子供っぽくて、ちょっとかわいい笑顔だった。
「……他にも覚えてるの?」
「もちろん。一学期の終業式の日は『一緒に帰らない?』『雨が降る前に駅に着かないと』『校長の話長すぎ! 緑化事業の話とかどうでもいいじゃん』『洋一くんは真面目だね……何しゃべってたか私よく覚えてないよ』『曇ってきた』『降りそうだから走ろっか』『夏はこれだから……」
「ま、待って待って。もういいからっ」
 私は慌てて制止する。
 洋一くんの言葉には偽りもでたらめもないようで、私は恥ずかしがるより先に呆れてしまった。
「どんな頭してるの?」
「それだけ舞子さんのことが好きってことで」
「……」
「だから」彼は言う。「会話もメールもあんまり関係ないですよ」
「今すぐ忘れて」
「無理です」
「……」
「そんなに嫌ですか?」
 まっすぐ尋ねられて、私は口をつぐんだ。
「舞子さんのことは全部覚えておきたい、ってぼくは思ってます。それは会話もメールもいっしょで、何も変なことなんてなくて、えっと、『大切にしたい』って思っているんですけど……ダメですか?」
 真摯な目はひどく澄んでいて、私は少し怯んだ。
 個人的にはやっぱり恥ずかしいのだけれど、
「……絶対に忘れないの?」
「はい」
「私は忘れるよ?」
「メールは残りますよ」
「……」
 なるほど。記録に残るのも悪いことばかりではないらしい。
 恥ずかしいけど……。
「頑張ってみる」
「ええ、待ってます」
 帰ったら早速打ってみよう。自分からメールすることなんてない私だけど、洋一くんにならさらけだせるはず。
 彼にはずっと覚えていてもらいたいから。



「舞子さんからのメールには全部保護かけときますね」
「なっ……?」
「そうすれば嫌でも忘れませんから」



「やっぱり恥ずかしいよー!」



      ※   ※   ※



二年くらい前に無口スレに投下した小ネタです。

……うん、完全にスレ違いだね(汗)

いや、楽しく書けたので後悔はしてませんが。

わりとさらっと書いた小ネタですが、実体験も入ってます。
私はよくお気に入りのメールを保存して、読み返したりしてます。
で、みなさまからのコメントが書き込まれますと、その内容がお知らせメールとして届く仕組みになってまして。

はい、つまりはそういうわけでして(死)
今後コメントされる方は私に繰り返し読まれるということを覚悟してきてください(何)

でも、コメントってものすごく勇気づけられるんですよ。
読み返すたびに嬉しくなりますし、頑張ろうって気になりますし。
この嬉しさと同じくらいの何かを、拙作を通してみなさまにお届けできればと思いますが……。

まずは投下ペースを上げろという話ですね。

墓穴を掘りました。頑張ります。



かおるさとーでした。
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*** COMMENT ***

UP万歳!

ツイッターをみて、早速やってまいりました。こんばんは。
『メールの時だけ無口っ娘』 読みました。
舞子ちゃんのこだわりがかわいいw
洋一くん、すごい記憶力。かっこいいなぁ。
かおるさとーさんの作品で、丁寧語キャラという存在に目覚めた私です。
今まで拝読させていただいた作品では、丁寧語キャラというと女の子のイメージでしたが、男の子もいいものですね。
舞子ちゃんと洋一くんの関係は、同じ学校の先輩後輩なのだろうと読み解きました。
今後も彼はずっと、彼女の一語一句を刻み付けて、なにかにつけては思い出して微笑むのだろうなと。
彼女が言った言葉を彼女に返して、彼女が恥ずかしがるのを楽しむのだろうなとw

!? コメントがそんなとこに保存されてたとは!
おそらく会話なみに思ったことぽんぽん書いちゃってます。
そうだ、文字はずっとのこるのだ…。気をつけようかなと思いつつ、たぶん変わりませんww

ペースはどうぞ、ご無理をなさらずに。

NO TITLE

かおるさとー様、こんばんわ。
更新乙です。
では。



……。
だって、迂濶なこと書けないじゃない!
…………。
いえ、冗談はここまでにしてw

些細なことを恥ずかしがる舞子さんが可愛いです。
だからって、電報みたいな文面にしなくても。
さあ、次はツイッター風に"夕飯なう"とか短い文面に挑戦だ。
でも舞子さんの場合、後になって『私はなんてくだらないことを……』とか考えてへこみそうな気も。

からかったりせず、真面目に受け答えして更に相手を恥ずかしがらせる男の子もグッドです。
それにしても洋一君、君は直感像記憶力の持ち主ですか。
とは言え、人間興味の有ることは良く覚えるものですから、矢張りこれは愛のなせる業なのでしょう。
身長云々は、きっと指摘されてショックだったんだろうなあと想像するとなんだか微笑ましいです。
『気にしてない』とか言いつつも、きっちりカルシウム毎日取ってるし。

コメントに関しては……うん、私も"書いた事は忘れてくれ"と言いたくなる時もあります。
勢いで書いた事とかも、繰り返し呼んでくださるものと思うと恐縮です。
等と言いつつ、自分に付いたレスはきっちり保存していたり……。

今回も、小ネタをSSにまとめあげる手腕に感服いたしました。
次の作品も楽しみにしております。
お体に気をつけて、ご自愛ください。
乱文失礼しました。

ゴロさん

コメントありがとうございます。
小ネタなのでキャラの出来は細かくありませんが、舞子さんは一応『お姉さんぶろうとしてうまくいかない』感じの女の子、洋一くんは『おっとりしてるけど意外とやり手』の男の子、そんな風に考えてます。
あと、洋一くんは隠れSです(何)
敬語キャラは私の作品には結構出てきますが、ワンパターンになっていないか、とたまに危惧します。
まあ洋一くんは敬語キャラというより後輩キャラですから、他とあまりカブりませんが。

コメントは大事に保管させていただいております(笑)
いやホントに嬉しいんです。だからつい読み返したくなって。
できますればあまり気にせず、これまで通りよろしくお願いいたします。

くらげ様

コメントありがとうございます。
……け、警戒させてしまいましたでしょうか(汗)
できますればこれまで通り、一言でも嬉しいので、何かいただければと思います。
スレでいただくGJレス、私もちょっと保存してます。一部。

あー、舞子さんそんな反応しそうですw
ドジっ娘というわけではありませんが、ちょいちょい失敗したりズレたりする女の子、それが舞子さんです。
洋一くんはあまり悔しいとか思わない子ですが、舞子さんのためならいろいろ頑張る子です。基本舞子さんLOVEなので。

しばらく小ネタ更新を続けようかと思います。
いまだ入院中の身ですが、純愛スレの方もなんとか投下できるよう頑張ります。

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