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砂糖を焦がせば薫る日々

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漫画版『氷菓』コミックスのカバー裏絵とタロット絵との比較

こんにちは。かおるさとーです。



先日、漫画版『氷菓』の7巻を購入しました。
メロンブックスさんの特典が、私の大好きな十文字かほさんの全身絵が美麗に描かれたクリアファイルだったので、思わず通販で購入したのですけど、これがもうすばらしい出来といいますか、すばらしいかほさんといいますか、もう本当にすばらしかったのですね。
私の貧弱な語彙ではとてもじゃないけど言い表せないくらい、美しいかほさんで、これはもう33年後も時効にしないように大切に大切に保管しておかなきゃと固く決意しました。というか家宝にしなきゃ。

や、それは本題ではありません。話をしたいのは中身の方。
ええと、この漫画版『氷菓』はコミカライズとしては出色の出来になっております。
原作を読んだ方もアニメを観た方もぜひ一度手に取って読んでもらいたいです。本当にすばらしい作品に仕上がっております。原作とアニメ、どちらに偏ることもなく、ほどよいバランスを保ちながら、漫画独自の描写や細かい演出なども加えて、どちらのファンも満足できる内容になっております。たぶん小説でもアニメでも氷菓という作品をまったく知らない方にも楽しんでもらえるはずです。個人的にはアニメより漫画の方が好きかな。

いや、これも本題ではありません。漫画の魅力についてはもっともっと語りたいところですが、今日話したいのは厳密には本編ではなくて。そうじゃなくて。
ここから本題。

実はですね、わたし、先日から気になっていたことがありました。
というのはですね、この漫画版『氷菓』のコミックスのカバー裏、いわゆる裏表紙には、カバーの表紙とは違うイラストがいつも載っているのです。
で、先日の米澤先生のツイートから、どうやらこれは巻ごとにタロットカードの大アルカナをモチーフとしたイラストを載せているらしいのですね。
現在コミックスは7巻まで発売されていますが、つまりはここまで7枚の大アルカナが描かれてきたということです。
そんなことを言われたら、改めて調べないわけにはいかないじゃないですか。
というわけで、自分なりにいろいろタロットを調べ、カバー裏絵と比較してみました。
以下に詳細をまとめていきます。画像はあげません。興味のある方はコミックス購入してください。



1巻・愚者(番号なし)

作中のヒロイン、千反田えるさんです。
ワンピースにカーディガンという白を基調とした落ち着いた組み合わせはいかにも千反田さんらしいですが、荷物も手提げバッグ1つと実に軽装です。加えて白い犬を連れています。帽子についている花は1話で出てきた花ですね。私は何の花かわからなかったのですけど、ツイッターでフォロワーさんに教えてもらいました(ありがとうございました)。ハツユキソウだそうです。花言葉はずばり好奇心。千反田さんにぴったりの花です。

身軽な恰好、少ない荷物、白い犬というのはどれも「愚者」の暗示です。
愚者は身軽な放浪者で、その性質は自由、好奇心、衝動的な行動など。
『愚者のエンドロール』でも千反田さんは『愚者』に喩えられています。愚者のカードでは白い薔薇が描かれますが、ここでは前述の通りハツユキソウ。この囚われない感じがなんだか愚者っぽい。

しかし千反田さんはタロットとは違い、崖には向かっていません。犬も警告を発しません。
彼女は土地に縛られていて、現実をきちんと見据えています。どれだけその性質が自由な好奇心に満ちていようとも、自身の責任を放棄してどこへでも飛び立っていけるような奔放さは持ち合わせていないのです。
彼女は愚者の素養を持ちながら、決して愚者にはなりきれません。
少なくとも、今はまだ。


2巻・正義(ⅩⅠ)

古典部のレストレードこと伊原摩耶花さんです(それでいいのか)。
制服姿で席に着いて勉強中。机には秤。

「正義」のカードには右手に権力を表す剣、左手に正義と平等、公正を表す天秤を持つ女神が描かれています。
作中でも摩耶花は『正義』に喩えられていますが、このイラストでは右手にシャープペンシル、左手には何も持っていません。勉強しているところなので当たり前と言えばそうなのですが、秤はきちんと左手側に、そしてシャープペンシルは剣の代わりと考えられます。「ペンは剣より強し」です。一見何気ない絵でも、そう考えるとなかなかおもしろいですね。
また、レストレードは警部ですから、正義と権力を併せ持つ存在と考えればこれも結構興味深いモチーフかもしれません。まあ公正な正義を司るのは裁判所の役割ですが。

剣は裁きを与えるための武器です。しかし摩耶花は剣を持ちません。
誰かを裁くということは、自身が上位者で、かつ絶対的な公正感を持っていなくてはなりません。しかし彼女はそれを否定するでしょう。彼女は決して誰かを上位者として裁こうとはしないと思います。なぜなら自身もまた裁かれる側の人間で、相手とは目線が同じだからです。
彼女の正義や公正には、自分自身も含まれるのです。だから彼女はときに自分を責めます。公正であるがゆえに。そしてその公正感も大いに揺れます。裁かれる側であるがゆえに。小ずるい真似も、彼女にはできるのです。チョコレートのように、甘くも苦くもなれる側面を持ち合わせていることを、忘れてはなりません。


3巻・魔術師(Ⅰ)

古典部のワトソンこと福部里志くんです。
本編にも出てきたひまわり衣装と土星のコスプレ衣装が床に転がっています。机の上には4枚のトランプ(ハート、ダイヤ、スペード、クラブの1)とトレードマークの巾着袋。そして里志本人はサングラスを頭上に掲げています。

「魔術師」のカードでは魔術師の頭上に無限大(∞)のマークが浮かんでいるのですが、ここではサングラスの形が∞のマークの代わりとなっています。
魔術師は4つの小アルカナを操ることができます。タロットの小アルカナのスート(マーク、シンボルのこと)は「聖杯、金貨(貨幣)、剣、棒(杖)」の4つ。これをトランプのマークに当てはめると「ハート=聖杯、ダイヤ=金貨、スペード=剣、クラブ=棒」となります。
そして魔術師の番号は始まりの1。トランプが1で揃っているのはそれを表すためというのもあるかもしれません。

魔術師は自信を持って魔術の力を発揮します。その力によって人々を助けます。
しかし里志にはそこまでの力はありません。魔術師は己の満足のために力を振るいません。対して里志の労力は己のためだけに使われます。そのあり方は魔術師のそれではありません。それでも彼は笑っています。
タロットの魔術師は自信に満ちた表情で、人々のために力を振るいますが、里志が笑っているのは己を知っているというただ一点の自覚によるものです。その笑顔の裏には諦めが潜んでいるかもしれません。
なにしろ、福部里志という少年は、笑顔を作るのが得意なのですから。


4巻・星(ⅩⅦ)

我らが主人公にして省エネ主義者の名探偵・折木奉太郎くんです。
椅子に座り、湯呑みにお茶を淹れています。頭の後ろには土星のような輪のある星?でしょうか。そこから垂れる糸に星やら鳥やらぶら下がっています。なんなんでしょうね、これ。里志の方こそこういうものを身につけそうな気がしますが。土星的な意味で。

「星」のカードでは7つの星が輝いていて、その真ん中にさらに一際輝く大きな星があります。星は可能性の象徴で、あらゆる可能性を集約してできた一番大きな星が、その人の夢や目標を表します。
奉太郎の周りにもいろいろな形の星がぶら下がっていますが、一番大きな星は頭の後ろにあって、はっきりとは見えません。あらゆる可能性が彼を取り巻いてはいるものの、それらを集約できるかどうかはまだはっきりとはわからない、という意味かもしれません。4巻にはちょうど「愚者のエンドロール」編が収録されていますが、この時点では奉太郎は事件の全貌も見えていませんし、本人にもそれを積極的に解決しようという意志はありません。現段階では「星」の素養はあるものの、中途半端な状態なのですね。
そう考えれば奉太郎が自分の湯呑みだけにお茶を淹れている意味も判るような気がします。元のカードでは女性が地面と池の両方に水を注ぎ、世界に潤いを与えるのですが、今の奉太郎には周りを助けようという大それた考えは無いのです。
彼にできるのは、自分の手元を潤すことのみ。手の届く範囲しか、彼は助けません。千反田さんの気になりますくらいなら付き合ってやるものの、それ以上のことには手を伸ばしませんし、その力は及ばないのです。
また、鳥は夜明けを告げる象徴です。彼の夜はもうすぐ明けるのでしょうか。


5巻・女帝(Ⅲ)

病院長入須家のご令嬢・入須冬実さんです。
回転椅子に座って脚を組むその姿は、まこと女帝に相応しい。右手には指し棒を持ち、その傍らには鷲の描かれた盾があります。実にシンプルな構成ですが、こういうのがよく似合う方でもありますよね、入須さんは。

「女帝」のカードでは女帝は月桂樹の冠をかぶっています。入須さんのカチューシャが月桂冠の代わりなのかもしれません。
そして右手に持つのは本来笏(しゃく)ですが、入須さんが持つのは指し棒です。女帝は攻撃をせず、愛を持ってすべてを受け入れます。しかし入須さんはもちろんそんな性格ではありません。ときには人の心さえ操り、確実に目的を達成する冷徹さを持っています。指し棒は指示を出し、人を動かす象徴だと考えられます。
さらに傍らの盾には鷲の姿が。獰猛さ、攻撃性の象徴と捉えるのは苛烈に過ぎるでしょうか。タロットでは、盾は攻撃をせずに防御に徹するいわば愛の象徴なのですが、入須さんの盾にある鷲のマークは、もしかしたら「攻撃の構えはいつでもできている」という意思表示なのかもしれません。
本編で奉太郎も言ってましたが、入須さんの性質はタロットの女帝の意味とは全然違うものです。ここではタロットになぞらえつつも、入須さんの性質に合わせて正反対のものに置き換えるような、やや皮肉にも映る構成になっています。盾の形も本来はハート型なのですが、獰猛な鷲がVの字に翼を広げる姿がハートを表しているようにも見えます。皮肉が利いています。女帝は美しくも苛烈に、人々を従えるでしょう。


6巻・力(Ⅷ)

本編のデウス・エクス・マキナ、奉太郎の姉の折木供恵さんです。
例によって目元は隠れて見えませんが、読書中の奉太郎の頭をぐりぐり弄る様子は、なんともほほえましいような、なんだか怖いような。奉太郎が苦手にしている存在ですが、ここでもその構図は変わりません。

「力」のカードでは女性が獰猛なライオンを手なづける絵が描かれます。本来力はライオンの方が上ですが、相手のことを理解することによって、力の弱いものでも上位者を従えたり仲良くなったりすることができるという意味が込められているのです。
しかし、供恵さんと奉太郎では力関係は供恵さんの方が上です。そういう意味では奉太郎はライオンとは言えないかもしれません。供恵さんの方がもしかしたらライオンなのかもしれません。ライオンは女性に甘える構図でしばしば描かれます。ここでは近づくのが供恵さん、嫌がっているのが奉太郎です。タロットの逆位置とも取れる、なかなかに興味深い構図です。
それにしても4巻でせっかく「星」で描かれたのに、こっちで「力」を冠されてしまうとは(しかも姉のついでに)……奉太郎はつくづく不憫ですね。


7巻・戦車(Ⅶ)

漫画研究会部長・湯浅尚子さんです。
これまでのカバー裏絵で一番の黒さです。驚きの黒さ。摩耶花さんと河内亜也子さんの絵で作った紙相撲で遊んでいます。怖いわあ……。口元が緩んでいるのがもうね。本編でも結構やり手というか、それはちょっとあんまりじゃないのかってことをしてますけど、一体何者なんでしょうね、この人。好きです。

「戦車」は黒白二頭のスフィンクスが引く戦車を、若者がコントロールする絵に象徴されます。ここでも正反対の意見を持つ二人を、湯浅さんがコントロールするという構図になっています。二人の衣装も正反対。
戦車の表す意味は「葛藤」。2頭のスフィンクスどちらの意見に従って戦車を走らせるのか、乗り手は葛藤します。
しかし湯浅部長に葛藤している様子は見られません。それが単に表に表れていないだけなのか、何にも考えていないのか、果たしてどちらでしょう。二人をコントロールすることによって漫研を成功へと導くのか、それともコントロールすること自体に意味はないのか。湯浅さんの性質だけではなく立場も考慮すべきポイントとなるでしょう。
まあ部長と言う立場を考慮してもかなり黒いことには変わりありませんけどね。でも好きです(2度目)。





……というわけで、タロットの本来の意味と、カバー裏絵の違いとをいろいろ比較してみました。
構図がなかなかに深くて、考察が追いつきません。楽しいです。ここで書いたこと以外にも、いろいろな側面があると思いますし、深読みだとしてもタロットを通して登場人物の性格や性質を考察していくのは、理解を深める上で非常に役立ちます。そういう意味ではこの漫画版『氷菓』は、原作やアニメの理解をさらに深めて補完する役割も兼ねているのでしょう。少なくともそういう読み方が出来る。それはコミカライズとしては相当なレベルではないでしょうか。

それにしても6巻と7巻には参りました。1~5巻で描かれたキャラクターは全員本編内でそのモチーフとなる大アルカナが言及されていたのですぐに特定できたのですが、6巻の供恵さん、7巻の湯浅さんは言及されていないのですぐには思いつきませんでした。あれは愚者のエンドロールでのみ行われたちょっとした遊びのようなものですから、当然と言えば当然なのですが、7巻の湯浅さんなんて最初は戦車とは思いませんでしたよ。
最初は「悪魔」かと思いましたが、どうも合わない。「月」でもないし、「恋人」にしては変化球過ぎる……。で、しばらく考えて摩耶花と河内先輩の正反対な様子を見て「あ、これ戦車だ」と気づきました。
供恵さんは奉太郎がいたので「あ、「力」だ」とすぐに気づいたのですけどね。でも「世界」もありだったんじゃないかなあ。

こういうのが今後も続くのでしょうか。とっても楽しみです。
かほさんはたぶん本編にあわせて「運命の輪」になるんだろうなあ。



それではそろそろこの辺で。

かおるさとーでした。
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